2025年5月26日に行われたJISタシケント校の卒業式での挨拶文です。
11年生の皆さん、卒業おめでとうございます。そして他の学年の皆さん、進級おめでとうございます。
私たちの学校JISは、ウズベキスタンに日本型教育を行う学校を作ろうということで、昨年9月に開校しました。私はその高い志に深く感銘し、昨年の3月からその設立に関わってきました。
本日こうして保護者の皆様とともに、このようにたくましく成長した子どもたちの笑顔を見ることに私はとても幸せを感じています。
皆さんはファーストペンギンという言葉を知っていますか。ファーストペンギンとは、集団で行動するペンギンの群れの中から、危険が待っているかもしれない海へ、魚を求めて最初に飛びこむ1羽のペンギンのことです。その勇敢なペンギンのように、初めてのことに挑戦するパイオニア精神の持ち主のことを、敬意を込めて「ファーストペンギン」と呼ぶのです。そして、ファーストペンギンの一歩が、後に続く仲間たちに道を示し、新たな世界への扉を開くのです。
まさに、今日、初めてこの学校から巣立つ皆さんは、「ファーストペンギン」のような存在です。
これからの人生において、皆さんの前には数え切れないほどの選択肢が広がっています。時には迷い、時には困難に直面することもあるでしょう。でも、どうかこのJISでの経験で培った精神を忘れないでください。勇気をもって様々なことに挑戦し、未来を切り開く存在になってください。皆さんならなんだってできます。何者にもなれるのです。
「ウズベキスタンと日本の未来」を一つの言葉で表すと、「希望」だと私は考えます。そして、その希望の未来を実現する鍵を握ってるのがここにいる皆さんなのです。皆さんは無限の可能性に満ちています。仲間と支え合いながら、輝かしい未来に向かって、勇敢に羽ばたいてください!これからの皆さんの成功と幸せを心から願っています。
JISエグゼクティブアドバイザー兼副校長 下町壽男(しもまちひさお)
🔳 英語版
Congratulations to all 11th-grade students on your graduation, and to students of other grades on your advancement!
Our school, JIS, opened last September as the first Japan-style international school in Uzbekistan. I was deeply moved by this vision and became involved in its establishment from March of last year.
Today, standing here with parents, I feel truly happy to see the bright smiles of you all.
Now, have you heard of the word “First Penguin”? In a group of penguins, there is one courageous penguin that jumps into the ocean first in search of fish, even though danger may await. This brave pioneer is called the "First Penguin," and we use this word with great respect. And FPs first step shows the way to the others.
And opening doors to new worlds.
Today, all of you graduating from this school for the first time are like the "First Penguins."
As you move forward in life, countless possibilities will unfold before you. There will be times of hesitation, and moments when you face challenges. But always remember the spirit you cultivated at JIS—
You are capable of achieving anything.
If I were to express the future of Uzbekistan and Japan in one word, it would be "hope." And you are the ones who hold the key to realizing this hopeful future.
You are full of unlimited potential. Support one another and step toward a brilliant future. I wish you all success and happiness ahead.
Thank you.
2024年9月7日・9日に行われたJIS(Japan International School)サマルカンド校およびタシケント校での私の挨拶文です。この学校への思いと、私が考える日本型教育について述べました。
皆さんこんにちは。本日この良き日に、こうして、日本国際学校(JIS)がめでたく開校できたこと、そして皆様にここで出会えたこと、とても嬉しく思います。私はただいま紹介にあずかりました、この学校で、エグゼクティブアドバイザーの任を担っている下町と申します。
実は今、日本ではウズベキスタンが静かなブームです。毎週金曜朝、テレビでウズベキスタン特集をやっていて、それを見た私の友人が、ウズベキスタンは素晴らしい国ですねと言ってきます。私はそのように言われると、自分が褒められたように嬉しい気持ちになります。
私は、この静かなブームが、今後大きな波になっていくだろうと確信しています。物事がブレイクするためには、その前の静かなブームの時期が大切です。そして、その灯をともした人々が、後の大きなイノベーション、変革を生み出していく中心人物になることと思います。
そのように考えると、タシケント校のエンドール校長、サマルカンド校のフルシド校長、本校の投資家であるエルムロットさんが先見の明を持ち、ウズベキスタンで初めて日本型教育を導入した、このJIS「日本国際学校」は、まさにウズベキスタンと日本の絆を強め、両国の未来を明るいものにしていく礎になるものだと思います。
新しくスタートするこの学校の「今」とは、これまでこの学校経営に関わってきたすべての人たちの過去の苦労が咲いている「今」です。そして、また「今」とは、これからのワクワクする未来の蕾である子どもたちでいっぱいの「今」でもあります。
私は、マネジメント・統括してきたKEIアドバンスの坂田拡光、子どもたちにサイエンスショーなどを通して科学の面白さを伝える活動をサポートしてきた岩手大学教授の高木浩一、小学校低学年の探究型の授業モデルを中心的に提示してきた和光大学教授の加川博之、そして片平エンジニアリングのラスルとともに、こちらの学校設立に、カリキュラム開発の面から協力してきました。
私は、数学の教科書の日本型サブテキストの作成、教材や教具の提供とともに、職員研修、子どもたちへの授業も何度も行ってきました。その中で、ウズベキスタンの子どもたちの目の輝き、先生方の積極的な姿勢に心打たれました。ウズベキスタンへの日本型教育の提供は、ウズベキスタンへの支援であるとともに、同時に、日本の教育課題について気づかせてくれるヒントに満ちています。
さて皆さん、「日本型教育」とは何でしょう。みんなで着物を着ることでしょうか、お昼にお寿司やラーメンを食べることでしょうか。まさかですよね。では、放課後に皆が一斉に掃除をすること、でしょうか。私はそれも違うと思います。日本型教育とは、日本でやっている事の、その形式・様式を単に真似ることではありません。大切なのはその行動の裏にある精神です。
日本の学校で、全体で掃除をしたり、道徳を学ぶのは、知識や技能を身につけるより前に、子どもたちの「情緒(Jocho)」を育むことが必要と考えているからです。ここでいう「Jocho」とは、物事に感動したり、共感する心、不思議なもの、未知のもの、美しいものに心が動き、そこからもっと先を知りたいという好奇心や探究心が生まれていくことです。「Jocho」が育まれることで、自律的に行動することや、他者への優しさを身につけることにもつながります。これが私の考える日本型教育のスピリッツです。
しかもこれは、学力の向上と強い関係があります。なぜなら、「Jocho」が育つことによって、気づきの感度が高まり、それは本質をつかむ力になり、自ら学ぶことへの原動力にもなるからです。また、優しさを身につけた人間は、相手を高めることで自分の能力が磨かれることを知っています。そして、世の中の困難に立ち向かう勇気や、自分に打ち勝つ力にもなるのです。
私は校内にある素晴らしい壁の絵を見て、まさにこういう環境が子どもたちの「Jocho」を育てると確信しました。
その壁絵の一つに、アインシュタインの言葉がありました。
Education is not the learning of fact but the training on the mind to think.
これこそが、私の考える日本型教育と合致する言葉です。これからの社会では、何かをいっぱい暗記しているとか、計算する速度が人より速いなんて、意味がありません。そうではなく、未知の物から、新しい宝を見つけること。ものに集中し、粘り強く考え抜くこと。一方で、仲間と共同して新しい価値を創り出すこと。そういった「考える心(mind to think)」を生み出すのが「Jocho」の力であり、日本型教育の真髄だと思っています。
先日タシケント校の何人かの先生方と、この学校をどんな学校にしたいかというテーマでワークショップを行いました。ある先生は「子どもたちが、明日も学校に来たいというワクワクした気持ちになる学校にしたい」といいました。またある先生は「生徒も先生もともに幸せを分かち合い、広げあって行ける学校にしたい」そして、「そのためには私は全力で力を注ぎたい」と力強くお話されました。
私は、これらの言葉にとても勇気づけられました。まさに、「Jocho」を育て「ウェルビーイング」な教育を行う日本型授業のスピリッツを、先生方はすでに実践しようとしている、と感動しました。
私たち日本側のスタッフは、これからもこちらの学校で、人材の交流、特に、大学との接続の支援を模索していきたいと思います。そして、ウズベキスタンと日本の良好な関係を更に加速させていければと思います。
皆さん、ともに踏み出しましょう。まだ誰もが見たことのない道かもしれません。恐れるなかれ、踏み出せばそこに道はできます。そして、次の世代の人たちがそれを追いかけて、更に新たな太い道が生み出されていくでしょう。一緒に未来を創っていきましょう。本日はおめでとうございます。
JIS副校長兼エグゼクティブアドバイザー 下町壽男
■Opening Ceremony (Samarkand School)サマルカンド校開校式
■Opening Ceremony (Toshkent School)タシケント校開校式