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フェルトボールで数学を②

その4 グノモンのススメ

2019年の1月に、旧ブログ「あなたと夜と数学と」に、私がこれまで「グノモン」を使って行ってきた実践を「がくもんのススメ・・・ぐのもんのススメ」というテーマでまとめました。

グノモンはフェルトボールを使って作っていたので、こちらにもまとめ直して、掲載しておこうと思います。


1 グノモンとは奇数を表す図形数

そもそもグノモンとは何でしょう。Wikipediaには次のような記述があります。

 

グノモンまたはノーモン(Gnomon)は、日時計の一部であり、影を落とすものである。グノモンという言葉は、古代ギリシア語で「指示する者」「識別する者」等の意味である。天文学や数学その他の分野で、様々な目的で用いられる。

 

日時計の塔の部分と影の部分を眺めると、L字型に見えますね。そこで数学では、正方形をn個つなげたものを2つ用意して、それらを1個の正方形を要としてL字型にあわせたものをグノモンと呼んで、奇数を表す図形数として用いられています。つまり、このことから、奇数を2n+1と表現することが自然に納得できますね。

私は昔、これを角材で作ったり、黒板掲示用としてデコパネで作ったりしていましたが、低コストで手軽に作るにはフェルトボールがいいですね。フェルトボールは100均で大量に購入できるし、木工用ボンドで加工も簡単にできます。

 


2 奇数の和と平方数

1から奇数を連続して足すと平方数になります。グノモンを使うと、このことが一発で納得できます。

 

 

3 グノモンとピタゴラス数

2の結果から、あるグノモンが平方数であれば、ピタゴラス数が作られることがわかります。

例えば、下図左は、

なのですが、このように、最後に加えられる奇数を9のような平方数にしておくと、

とできるので、ピタゴラス数をいくらでも作ることができます。最後に足す奇数を、

とすると、下図右のように一般化できますね。

つまり、

という恒等式が得られるので、これからピタゴラス数を無限に作ることができるのです。


4 グノモンの部分和と立法和

立法和が自然数の和の平方になることはよく知られています。これは次の様な図形数を用いることで見える化できます。


さて、ここで正方形化されたマスを、L字分割すると、左の図のように、立法数はグノモンの部分和になっていることがわかります。

以上のことから

 

がわかりました。

つまり、「立法和」「自然数の和の平方」「奇数の連続和」が握手したんですね。

美しいと思いませんか。


5 自然数の和

グノモンを積み上げてみましょう。こうすると、2(1+2+3+4)+5と見ることができますね。これが5の2乗に等しいことから

自然数の和を考えることができます。


6 サイコロの目の最小値の期待値

最後に次のような問題を考えてみましょう。

 

n個のサイコロを1回投げたとき、出た目の最小値の期待値を求めよ。

 

この問題は、2000年に日本で行われた国際数学教育者会議(ICME9)の時、広島の中原先生から教えていただいた問題です。n=2の場合、つまり、2個のサイコロの時は、次のグノモン型にした表を利用すればわかりますね。


ところで、この計算は、グノモンをイメージすると、右のように考えることもできますね。

美しいですねえ。


n=3の場合、つまり3個のサイコロを投げた場合は、右のような立体版のグノモンを考えます。玉ねぎみたいな感じですね。これの各小立方体に、3つのサイコロの6×6×6通りのパターンン対応させているわけです。一番外側のグノモンが、最小値1のところ、次のグノモンが2のところ、という具合です。フェルトボールで作るとやや安定感に欠けますが、可愛らしくて私は気に入っています。


さて、期待値は下図左のように計算されます。そしてグノモンのイメージから、一般化すると下図右のようにまとめることができます。


Pokémon GOからGnomon GOへ!

そしてGakumonにGO! ぐのもんのススメはがくもんのススメなり~